外国人労働者を雇用する企業が増える中で、「外国人にも健康診断は必要なのか」「日本人と同じ対応でよいのか」と疑問を持つ事業者は少なくありません。
特に初めて外国人を採用する企業では、在留資格や雇用契約との関係も気になり、健康診断の実施義務について確認したいという相談をよく受けます。
結論からいうと、外国人労働者であっても、日本の労働安全衛生法が適用される労働者であれば原則として日本人と同様に健康診断を実施する義務があります。国籍によって健康診断の有無を判断することはできません。
健康診断は義務です
外国人労働者に対する健康診断は、労働安全衛生法第66条に基づき、事業者の義務となっています。
対象となるのは日本人と同様に労働者として雇用される外国人です。
正社員だけでなく、一定の条件を満たす契約社員やパートタイマー、有期雇用労働者も対象となります。
主な健康診断には次のようなものがあります。
・雇入時健康診断
・定期健康診断(年1回)
・特定業務従事者健康診断
・海外派遣労働者健康診断
・特殊健康診断(有害業務従事者など)
これらは国籍ではなく、業務内容や雇用形態、労働条件によってどの健康診断を受けなければならないかが決まります。
なぜ外国人にも健康診断が必要なのか
労働安全衛生法は、日本国内で働く労働者の安全と健康を確保することを目的としています。そのため、在留資格や国籍にかかわらず、日本国内で雇用される労働者には同じ保護が及びます。
企業には健康診断を実施するだけでなく、結果を適切に管理し、必要に応じて医師の意見を聴取し、就業上の措置を講じる義務があります。
また日本語が十分理解できない外国人労働者に対しては、健康診断の目的や受診方法、結果の説明をできる限り理解できる言語で行うことが望まれます。
説明不足によって受診を拒否したり、異常所見への対応が遅れたりすると、労務管理上の問題につながるおそれがあります。
よくある誤解
「技能実習生だけ健康診断が必要」「外国人は母国で健康診断を受けているから不要」という考えは誤りです。
技能実習生、特定技能外国人、技術・人文知識・国際業務などの就労ビザ保持者、永住者、日本人の配偶者等など在留資格の種類は関係なく、労働者であれば基本的に同じルールが適用されます。
また海外で受けた健康診断がある場合でも、日本の法令に基づく雇入時健康診断として当然に代替できるとは限りません。検査項目や実施時期などの要件を満たしているか確認が必要です。
実務での注意点
外国人労働者の健康診断では、受診案内や問診票が日本語のみであるため、内容を十分理解できないケースがあります。その結果、既往歴や服薬状況が正確に伝わらず、適切な診断が難しくなることもあります。
企業としては、多言語対応の医療機関を利用したり、通訳や翻訳資料を準備したりするなど、円滑に受診できる環境を整えることが重要です。
また、健康診断の実施記録や結果は適切に保管し、個人情報として厳重に管理しなければなりません。
健康診断の未実施は労働安全衛生法違反となる可能性があるため、外国人だからという理由で対象外としないよう注意が必要です。
行政書士・社会保険労務士としての支援内容
社会保険労務士は、外国人労働者を含めた健康診断の実施対象者の判断、法令に沿った労務管理体制の整備、健康診断後の就業上の措置に関する助言などを行っています。
また、行政書士は外国人の在留資格に関する手続きや雇用に関する各種届出を支援しており、社会保険労務士と連携することで、外国人雇用に必要な法務・労務の両面からサポートを受けることができます。
まとめ
外国人であっても日本国内で雇用される労働者には原則として日本人と同様の健康診断実施義務があります。
国籍によって取扱いを変えることはできず、雇入時健康診断や定期健康診断などを適切に実施しなければなりません。
外国人雇用では、健康診断そのものだけでなく、多言語対応や結果説明、就業上の配慮なども重要なポイントとなります。
法令を遵守しながら安心して働ける職場環境を整えるためにも、制度の運用に不安がある場合は、社会保険労務士や行政書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

