外国人社員が退職する際、「退職後は母国へ帰国する予定です」と聞いていたものの、その後も日本に滞在していることが分かり、「会社として何か責任があるのではないか」と不安になる企業担当者は少なくありません。
外国人の在留資格は就労状況と密接に関係しているため、退職後の対応について正しく理解しておくことが重要です。
結論
外国人社員が退職後に帰国しなかったとしても、企業が帰国させる義務はありません。
ただし、企業には外国人雇用状況の届出など法律で定められた離職時の手続きを適切に行う義務があります。また退職後の在留資格について本人へ適切な案内を行うことが、トラブル防止の観点から望ましい対応といえます。
解説
外国人社員が退職した場合、在留資格が直ちに失われるわけではありません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格を持つ外国人は、退職後も一定期間は日本に在留できます。その間に転職活動を行い、新たな勤務先が決まれば、引き続き同じ在留資格で就労することも可能です。
一方で退職後も長期間就労活動を行わない場合や、在留資格に該当する活動を継続していない状態が続くと、在留資格の取消しの対象となります。
この判断は出入国在留管理庁が行うものであり、企業が帰国を強制したり、在留資格を取り消したりできる訳ではありません。
そのため退職した外国人が帰国しないこと自体について、企業が責任を負うものではありません。
よくある誤解
「退職した外国人が日本に残ると会社が処罰される」という考えは誤りです。
企業が適切に退職手続きを行い、法令に基づく届出を済ませていれば、本人がその後どのような進路を選択するかについて企業が責任を負うことは通常ありません。
また「退職したらすぐに帰国しなければならない」という認識も正確ではありません。
多くの就労系の在留資格では、活動内容や在留期限が有効であれば、転職活動を行うことは認められており、帰国だけが選択肢ではありません。
一方で本人には所属機関(勤務先)の変更や退職について出入国在留管理庁へ届出を行う義務があるため、企業としてもその点を案内しておくと安心です。
その他雇用保険の失業等給付の対象となるようであれば、手続きの案内をしましょう
実務での注意点
外国人社員が退職した場合には、企業は通常の退職手続きに加え、雇用保険に該当しない外国人を雇用していた場合は外国人雇用状況の届出をハローワークへ提出する必要があります。
主なものとしては、以下の対応があります。
- 雇用保険の資格喪失届を出す
- 雇用保険に該当しない場合は、外国人雇用状況届出を期限内に提出する
- 社会保険の資格喪失手続きを行う
- 本人へ離職票など必要書類を交付する
- 在留資格に関する届出義務について案内する
- 退職証明書を交付する
専門家としての支援内容
行政書士は、外国人本人の在留資格変更や転職に伴う手続きを支援しています。また企業に対して外国人雇用に関する法令遵守や退職時の適切な対応についてアドバイスを行っています。
社会保険労務士は、社会保険・労働保険に関する手続きや労務管理をサポートしており、行政書士と連携することで、企業・外国人双方にとって円滑な退職手続きを実現できます。
まとめ
外国人社員が退職後に帰国しなかったとしても、企業が帰国させる義務や責任を負うわけではありません。重要なのは必要な手続きや届出を適切に行い、法令に沿った対応を行うことです。
外国人雇用では、退職後の在留資格や届出制度について誤解されることも少なくありません。不明な点がある場合は行政書士や社会保険労務士などの専門家へ相談し、適切な対応を進めることをおすすめします。

